東京藝術大学 美術学部 デザイン科 Tokyo University of The Arts, Department of DESIGN

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伊那市古民家プロジェクト

2017-12-25

描画・装飾研究室で行いました、伊那市古民家プロジェクトの報告をいたします。


長野県伊那市高遠町の塩供しおくにある古民家を拠点として地域を見つめデザインやアートの力で現地の課題に取り組むプロジェクト。その序章としてまずは住民の声を聴くため視察を行った。同時に、十数年続いている藝大美術教育と高遠美術館のワークショップと連携し「食」をテーマに事業を展開した。

実施期間 2017年11月17日(土)-19日(日)

塩供の古民家

1日目

まずは古民家の状況確認とワークショップの準備。夕方には「第2第3保育園と地域の未来を考える会」の方と意見交換し課題点を探る。

2日目

藝大美術教育主催のワークショップ「箸と器をつくろう」作業開始。地元の小学4年生から高校生まで約20人が参加。その間、デザイン科チームは地域を巡り調査。移住者たちの暮らしを見学させてもらった。レストランや盛家住宅を建築した大工の今枝さんに同行していただいた。

1.
高遠町図書館にて高遠藩藩校「進徳館」で使用されていた明治期の教科書や江戸時代の古文書等を見せていただいた。それらの歴史資料を元にしたアプリ「高遠ぶらり」の開発者、諸田さんと共に高遠城址公園へ向かい古地図の上と重ねて歩いた。「高遠ブックフェス」についても情報を収集。

2.
農家レストラン「こかげ」で昼食。寒天工場であった建物を改装し、地元で採れた野菜を中心にレストランを経営。新鮮で美味しい料理をいただいた。

3.
豆腐工房「まめや」を見学。好きだった豆腐を作ろうと、脱サラしてこの地にあった豆腐店を借りて学び、ご自分の店を持った。昔ながらの製法で美味しい豆乳を作り、そこから豆腐にしていく。試飲させていただいた豆乳は、濃厚でくさみがなく飲みやすかった。

4.
盛さんのお宅見学。木材加工業を営んでいたことから自分で集めた木材で家を建ててもらった。山から木を伐採して炭を製造。山に囲まれた暮らしに全く不便さは感じていないという。

3日目

子供達の制作も仕上げ段階。地元のお母さんたちにもご協力いただき、ワークショップで制作した器と箸で郷土料理を食べる企画「食」のための調理を開始。会場では小さいお子さんと一緒に巨大お品書きを制作。

料理は「杣人そまびと汁」、「源平もち」、「栗とさつまいものひっかき」のほか、「まめや」の豆腐の辛味噌のせ、洋菓子工房「えんむ」のりんごのケーキ、お漬物、地元のりんごなどの差し入れもあり、盛大な昼食となった。

この地域は他県からの移住者が多く、保育園や学校の維持ができているものの、将来の過疎化には不安を抱いてもいる。ただ、取材の中で「田舎暮らしはいいですよ」と勧められたように、地元の方による移住者を受け入れる体制ができており、また、お互いが協力的でとても明るい人ばかりだった。そして何より子供が元気でのびのび楽しんでいる姿が心に残った。

今回の「食」プロジェクトでは、地元の郷土料理を私たちに教えていただくことを狙いとしていたが、移住者の方にも伝承することができたことを地元の方々も喜んでいた。両者の繋がりがより強固なものになったことは、最大の成果であった。

今回の事業で得たことを持ち帰り、今後に繋げていくため検討を続けていく。


【参加者】
東京藝術大学美術研究科デザイン専攻 描画・装飾研究室
押元一敏 准教授
丸山素直 非常勤講師
小柳景義 教育研究助手
佐藤果林 大学院修士1年生
鈴木沙良 大学院修士1年生
張家維 大学院修士1年生
宝満恵梨伽 大学院修士1年生
Miranda Burnett-Stuart 交換留学生
Sofia Pierro 交換留学生

東京藝術大学美術研究科美術教育専攻
本郷寛 教授
白田祥章 非常勤講師
西山大基 非常勤講師
武内優記 助教

【協力】
伊那市教育委員会文化振興課
高遠美術館
高遠第2第3保育園と地域の未来を考える会
伊那市立高遠中学校
伊那市立高遠北小学校
高遠第2第3保育園
伊那市立高遠町図書館
塩供地域の住民の皆様方