2020年度古美術研究旅行実施報告
2021-01-15
デザイン科では例年、学部3年の6月に古美術研究旅行(以下古美研)と呼ばれる研修旅行が実施されます。京都・奈良、時に近隣の県まで足を延ばし約2週間かけて寺社や庭園などを拝観し、じっくりと日本文化の伝統と遺産を学ぶことの出来るまたとない機会となっています。
すでに古美研を体験した先輩の話などを聞いて、入学当初から心待ちにしていた学生も少なくなかったことでしょう。しかしながら、この古美研も2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、世の中のあらゆる行事と同様に中止を余儀なくされてしまいます。中止の知らせを受けたのち、学生たちからは多くの落胆の声が寄せられました。
「藝大生は手を動かしてこそ」
大学生活の中で、繰り返し学生に伝えられる印象的なフレーズのひとつです。
東京近隣古美研の実施
従来の古美研が中止になるや否や、学生たちは本年度の状況に合わせて新たに案出された課題に取り掛かることになります。手を休めることなく、今年度は「東京近隣古美研」が実施されることとなりました。
先人たちが遺したモノやコト、それらの創造の過程などを探究し、守るべき価値を定めて伝統を次の世代へ継承する力を身につけ、世界の激しい変化のなかでデザインや美術の本質を読みとる力に必要な古美術の基礎知識や理論を習得することを目標とする。
課題文抜粋
課題内容は、デザイン科教員推薦の東京都周辺に点在する68ヶ所の施設の内、任意の16ヶ所程度を見学しリサーチの内容を「古美研ノート」としてまとめること。非常事態宣言なども重なり休館している施設も多い中、学生たちは情報を共有しあい、施設へ足を運び、7月から9月の約2ヶ月間をかけて各々リサーチを行い続けました。
単独でじっくりとリサーチを行う学生もいれば、仲の良い少数グループで見学する学生もいました。
「久しぶりに友人と直接会って、一緒にスケッチをするのが新鮮で楽しかった」
後日見せてもらった記録写真には、笑顔でポーズを取る学生たちの姿が収められており、教員からは「こんな状況下でも、学生たちが楽しそうにしてくれていてよかった」という声も聞こえてきました。
従来の京都・奈良の古美研では、拝観先の歴史や知識をその場で教員から教えてもらうことができました。しかし本年度はそれが叶わなかったため、本来各所で体感するはずであったものごとを、オンデマンド講義で知識として得る機会を設けました。
例年とは大幅に異なった古美研となりましたが、試行錯誤の中でかたちになっていった様子、および成果物としてあがってきた「古美研ノート」を手に取って感じたことがあります。
「作り続けること」の大切さ、出題意図にあったように「世界の激しい変化のなかで、デザインや美術の本質を読みとる力に必要な、古美術の基礎知識や理論」の習得ができた、実りの多い「2020年古美研」でした。