東京藝術大学 美術学部 デザイン科 Tokyo University of The Arts, Department of DESIGN

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客員教授 祖父江 慎先生 特別講義 (2021)

2022-06-24

2021年12月6日。小説・漫画・写真集…。幅広いジャンルを手がけ、常識を覆すブックデザインで知られる客員教授の祖父江先生に、デザイナーを目指す藝大生へのメッセージを語っていただきました。

祖父江先生による講義の様子

「うまくいかない喜び」。祖父江先生が掲げるテーマです。

一般にデザイナーは、仕事でお金をいただくと緊張してキチンとしてしまいます。各要素の大きさが揃ってきたり、余白の具合がどこも一緒になったり…。そうして出来上がった「キチンと」したデザインは他者を寄せ付けないものになります。均等に並んだ虫の卵や、正円のカラス除けなどがわかりやすい例です。

反対に、フレンドリーなデザインを生むには、いつもの雑な自分を呼び戻すと良い。デザインするのではなく絵を描くような気持ちで臨むと、ほどよく不安定で発言力のあるものとなります。要するに、言葉で考えずに絵で考える。絵で考え目で判断する。その基準で出来上がった良いものがなぜ良いのかを、後から言葉で考えれば良いのです。

目や直感を信じることを優先して、そのあと言語で振り返るという順序です。絵で考えていると、うまくいかないときにも面白くなる道が見えてきて、祖父江先生に言わせてみれば「うまくいかなくてもぜんぜんへっちゃら!」なのだそうです。

祖父江先生による講義の様子

自分の独特さを信じ、ときにはクレームを交わして、発言力のある良いものを作る。依頼の有無に関わらず、良いものを作る。そうした積み重ねができる人は、デザイナーやクリエイターであるということを、教えていただきました。

講義の終盤には、祖父江先生ならではのユーモアを混じえ明朝体について解説していただきました。最初から最後まで笑いに満ち溢れた90分でした。

貴重で興味深い講義をありがとうございました!